瞳を知る

」 そのことを知らなくても顕微鏡で試料を見ることは出来ます。最初の頃コンデンサー絞りを適当に回し、見やすいと思われる位置で試料はちゃんと見えるので深く考えもしませんでした。顕微鏡の取扱説明書を見ると70〜80%に絞ると見やすくなることが書かれています。一体何に対して70〜80%なのでしょうか。コンデンサー絞りを適当に回せば見やすくなったり見難くなったりしますが、それは一体どういう状態にあるのでしょうか。
 「瞳」そのことを教えていただくまで、「瞳」がそれほど重要なことだとは思っていませんでした。試料がただ見えればそれで良いのだと言うのであれば、深く知る必要もないのでしょうが、自分の顕微鏡を少しでも理解しようとするなら少なくとも「瞳」は知っておくべき大切なことだと分りました。
 まず、胞子でも組織でも、何でも良いです。プレパラートを作り40倍の対物レンズで試料にピントを合わせます。覗いていた接眼レンズを片方抜いて奥を覗いてみると、光が見えます。コンデンサー絞りを左右に動かすと、光が大きくあるいは小さくなったりします。大きくすることを絞りを開くと言います。それとコンデンサーの横にコンデンサー上下ハンドルがあります。このハンドルをつかってコンデンサーを少し下げると光が絞られます。通常は最上の高さにしておきます。鏡筒の奥に見えている部分は、今覗いている対物レンズのレンズそのものでといいます。
 コンデンサーの位置が最上で外周丁度に絞りを開いたところが瞳に対して100%、そのときコンデンサー絞りをみると、対物レンズの胴横に記載のある開口数(N.A)になっているはずです。コンデンサー絞りは対物レンズに記載のある数字以上に大きくしても無駄な光を入れるだけです。70〜80%に絞るとは瞳に対して言われていることです。
  この瞳の状態がどのようになっているかが解かると、はじめて下に記載した「瞳の制御」が解かってきます。 

(私は最初の頃このコンデンサー上下ハンドルがあることさえ知りませんでした^ ^;)
  40倍の対物レンズでピントを合わせ、接眼レンズを抜き、瞳の奥の光がコンデンサー絞りやコンデンサー上下ハンドルによって開いたり絞ったりして大きさが変わることがわかったと思います。
 コンデンサー位置最上で外周丁度に開いたところ(瞳に対して100%)が、その対物レンズの持つ性能を100%引き出せる開き具合と言えます。しかし実際に試料を覗いてみると、見やすいのは瞳に対して70〜80%で、必ずしも瞳に対して100%が目で見る見易さとは言えません。
 (コントラストを上げ見やすくするにはコンデンサー絞りを絞れば良いのですが、絞りすぎると見えるはずの詳細部分が見えなくなったり、写真に撮ると汚い画像になったりしますので加減が必要です)
 

<数字が見えるように対物レンズを回したので、実際はもっときっちり締まっています。>
開口数
 左の写真は、対物レンズの数字を撮ってみました。手前にあるのがプランアクロマート×40の対物レンズで開口数は0.70あります。開口数というのはその対物レンズの持つ瞳の大きさであり、どれだけの回折光を取り入れることが出来るかを表しています。
 
 
 ランプハウスから送られた光はレンズやフィルターなどを通りフィールドレンズに送られ、さらにコンデンサーへと送られます。コンデンサーは集めた光を、レンズを通し試料に当たるように設計されています。
 レンズを通った光は中心部を通ってきた光よりも外側を通ってきた光ほど大きく屈折し、プレパラートを通ります。光は物体に当たると物体の後ろに回りこんで進む性質があります。この回り込む光を回折光といい、回折光は情報を持っており、屈折した角度の大きい回折光ほど詳細な情報をもっています。
 この回折光の屈折する角度が光軸(中心を通る真直ぐな光)に対して大きければ大きいほど、焦点距離の高い開口数の小さいレンズでは取り入れることが出来ません。対物レンズの開口数が大きくなるにつれレンズの焦点距離は浅くなり、プレパラートを通ってきた角度の大きい回折光を取り入れることが出来ます。屈折した回折光をどれだけ取り入れられるかで像の詳細さが見られるわけで、解像力は開口数によって決まります。
 上の写真の×20の対物レンズの開口数は0.70です。真ん中の×40倍の対物レンズと同じ開口数です。この二つの対物レンズの倍率は違いますが解像力は同じです。
瞳の制御
 一般に私たちが使う生物顕微鏡は明視野照明で観察していますが、偏斜照明・輪帯照明・暗視野照明で試料を観察することが出来ます。
瞳を見たとき
偏斜照明は遮光状態にし1辺から光を入れ試料を照らします。
輪帯照明は中心部を遮光した状態です。
暗視野照明は瞳全体が遮光されています。
上の瞳の状態を作るには

私の簡単お手軽アイテム
 @黒画用紙で対物レンズの瞳と同じ大きさやそれより少し小さい黒い丸い紙数枚を用意します。それを、それぞれスライドグラスに貼り付けておきます。
 A筒を作ります。フィールドレンズの上に@で作ったものを置いても良いのですが、フイールドレンズの上に置くよりコンデンサー直下のほうがうまく出来ます。フィールドレンズからコンデンサーまでの高さを計り、ファイルケースなどを利用して筒を作ります。
 B筒に乗る程度の大きさの黒画用紙を用意します。黒画用紙でなくても光を通さなければ何でも良いです。
            
フィールドレンズの上に筒を置いて、その上に黒い丸紙を貼り付けたスライドグラスを乗せたり、黒い四角の紙を乗せたりします。

     アイテムは・・・これだけ!
 偏斜照明は、黒い紙を動かしながら、瞳の1辺から光を入れます。光を入れる方向・量によって試料の見え方が違ってきます。中心部よりも外側に向かうほど光の持つ情報は詳細になります。入射する光は角度の大きい回折光で解像力が上がります。試料が立体的に見えます。
 輪帯照明は、瞳よりもやや小さな黒い丸紙のスライドグラスを筒の上に乗せ、瞳の中心にあわせ均一に周りの光が入るようにします。直接光が遮断され、入ってくるのは外周近くの屈折率の大きい回折光で、解像力は明視野照明よりもあがります。
 暗視野照明は、瞳と同じ大きさの黒い丸紙で光を遮断し、コンデンサー絞りを対物レンズの開口数以上に開きます。周りから入ってきた光が試料に反射し試料が見えます。これが×100倍の対物レンズN.A1.3でコンデンサーの開口数が1.25だった場合、暗視野照明は出来ません。つまり、対物レンズの開口数<コンデンサーの開口数が暗視野照明の出来る条件になります。
 対物レンズは低倍率ほど開口数が小さいので、コンデンサーの開口数と差があります。低倍率の対物レンズだと簡単に暗視野照明にすることができます。


***それぞれの照明の見え方の違い***
いずれもプランアクロマート×40倍 N.A0.7でEntolomaの胞子を撮ってみました。
明視野照明
偏斜照明
輪帯照明
暗視野照明

顕微鏡を楽しむTopへ Homeへ